AVは「エロを描くファンタジー」森林原人に聞く、AV男優だからこそできる性教育

20代、いや30代になっても不確かな知識のままであることも多い性の世界。

これは日本の性教育の問題でもあります。学校では「なんとなく」性教育の時間があったのは覚えているが、実際ためになったか?というとそう感じないという方も多いのではないでしょうか。
そんな、日本の性教育を前に進めるべく奮闘している方がいます。

その名は森林原人さん。STANDでも多くお話を聞いている偏差値78のAV男優です。
森林さんは日本の性教育に疑問を持ち、産婦人科医の上村茂仁先生と10代の子ども達に向けた性教育の動画を製作するプロジェクトを開始しました。

そこで今回は、森林さんの感じる性教育の問題点や、そもそもなぜAV男優が性教育動画を作るのか、その背景をお聞きしました。

森林原人/1979年生
筑波大学附属駒場中学校・高等学校出身。
中学校受験時ラサール・麻布・栄光に合格しており、偏差値78のただの秀才だった。
しかし、中・高と全く勉強しなかったため高校卒業後は1年浪人し、専修大学文学部心理学科に進学。大学でなかなか自分の居場所を見つけられず、以前から興味があった汁男優に応募。そこで素人とは思えない射精のコントロールなどを発揮し、周囲から求められる存在に。その後AV男優一筋の人生を歩み始め、経験人数は9,500人を超えている。
セックスの価値観の見直しや互いに傷つきにくいセックスの仕方、性感性症の予防などの啓発活動も行っており、著書に『偏差値78のAV男優が考える セックス幸福論』(講談社文庫/2016年)などがある。現在、スマホ世代向け〈学校では教えてくれない〉本当の性教育〜誰も傷つかないための知識〜と題して、正しい性教育を啓発するべくクラウドファンディングを実施中!

日本の性教育は「コンドームで避妊をするんだよ」と言っても「コンドームの着け方は説明しない」

− まず、簡単に現在行われているプロジェクトの概要を教えてください。

森林さん:「今回立ち上げたのは、産婦人科医の上村茂仁先生と、AV男優である僕が一緒に、10代の子ども達に向けた性教育の動画を制作するプロジェクトです。スマホであらゆる情報に簡単にアクセスできる世代への性教育は、学習指導要領に則ったものだけでは対応できないと思います。どの情報が正しくどの情報が間違っているのかをしっかりと伝え、性によって自分も相手も傷つかないようにしたいんです。なので、必要な正しい知識をYouTubeやニコ動で簡単に見ることが出来るようにしたいと思っています」

− 今の時代、簡単に性の情報にアクセスできる時代ですから、確かに学校教育では足らないと思います。ではそもそも、森林さんが考える日本の性教育の問題点はなんでしょうか?

森林さん:「僕が思う、日本の性教育の問題点は、基本姿勢が“寝た子を起こすな”であることです。性の扉を開けていない子どもに対し、性の知識を伝えることで、性の扉を開けるよう促してしまうんじゃないかという心配から、具体的な性の知識を与えないようにしているらしいのです」

− 僕としては、学校の性教育があまり印象に残っていないです。

森林さん:「多くの人がそうだと思います。例えば、精子と卵子がくっつく受精については話しますが、受精するための行為、つまり性交の話はしません。しませんというか出来ません。学習指導要領で禁止されているから。また、コンドームで避妊をするんだよという話をしても、コンドームの着け方は説明しません。話はどれも、具体性を帯び始める手前で終わります。結果、子どもたちは、興味を持った事をネットで調べ、間違った情報に行き着く可能性が高い。だとしたら、具体的な正しい知識にたどり着きやすいようにしておけばいいんだと思うのです」

− どうせ行き着くなら正しい知識を、ということですね。

森林さん:「それに、性の扉を開けるのはそんなに悪いことでしょうか?確かに性にはリスクがつきまといます。それを心配して遠ざけたくなる気持ちもわかりますが、子どもたちも馬鹿ではないので、『大人が何かを隠したな』ということを察知します。隠したという事は、それがいけないことだとか後ろめたいこと、恥ずかしいことなんだという風につながっていきます。性は食や睡眠と同様に当たり前の事なのだから、隠したりせず、ありのまま伝えるべきです」

− 人間の欲求のひとつですからね。

森林さん:「それから、そもそもの話ですが、寝た子がいつ起きるのか、起きているのか寝ているのか、先生や親はわかりません。だって自分のことを思い浮かべてみてください。性に興味を持ったり何か新しい性的経験をしたとき、親や先生に報告しましたか?

− 全くした覚えはありませんね…!!

森林さん:「ですよね。多くの人が隠したはずです。つまり、周りの誰にも『いつ起きるか分からない』ということです。だったら、月経や射精が始まる少し前の段階(小3か小4)から、性教育をしていく。その結果、性を不自然なものにしないで済むし、性によるリスクを未然に防げると思います。つまり、『性教育がワクチンになる』のです。この言葉は上村先生から教わりました」

− 性教育がワクチンになる。これは名言ですね。ちなみに、海外では日本と性教育に対する姿勢が違ったりするのでしょうか?

森林さん:「海外は具体性を持って教えていく事を重視しているところが多く、コンドームの着け方をちゃんと説明します。性暴力被害者や避妊に失敗した同世代に教室に来てもらい、スピーカーとして自分の体験を話してもらう国もあります。先生や親といった年の離れた世代から聞くのか、自分と同じ世代から聞くのかでは、当然後者の方が子どもたちに響きます」

AVは「エロを描くファンタジー」。現実と違うからAVみたいなことは起こらない

− 性教育という点で引き合いに出されがちなのはやはりAVだと思います。現場に立っている森林は、その辺どのように思っていますか?

森林さん:「AVはファンタジーです。ホラー映画は怖い物を描くファンタジーだし、アクション映画は派手な動きを描くファンタジーです。つまり、AVはエロを描くファンタジーなんです。だからこそ、現実とは違うから、AVのような事は起こらないし、AVの真似をすると現実ではうまくいかないよと性教育で伝えていきます

− AVはファンタジーか…!

森林さん:「同時に、大金をかけて3D処理などができるハリウッド映画とは違い、僕たちが仕事にしているAVでは生身の人間が行為をします。映像としてはファンタジーですが、実際の撮影現場ではリアルでもあります。なので、実際に行為をする人間の安全が最優先されます

− 安全が最優先というのは?

森林さん:「具体的には、出演することや内容に関する同意書に署名し、性感染症の検査が義務付けられ、カメラという第三者目線やスタッフなどの第三者が必ずいます。僕もAV業界の全ての撮影に関わっているわけではないので断言はできませんが、少なくとも僕が行く現場ではこの3つが厳守されています。このどれもが、一般人のセックスには欠けているものです。逆に見れば、これらの違いがあるから、AVの撮影現場でのセックスは安全なのです

− 公開するものだからこその安全性がそこにはあると。

森林さん:「同意書があるという事は、事前に何をするのかお互いに理解してるということです。セックスの回数は必ずで、体位の流れ、使うおもちゃや発する言葉、発射までの時間といったこともある程度決められています。その上で、見る人に段取り感を感じさせないよう、リアリティーを出すのがプロの仕事です。『虚実皮膜』という言葉があり、虚構と現実の世界は相反しているわけではなく皮1枚で繋がっているという意味です。この皮1枚のところを描くことを僕たちは目指しています。仕事としているセックスが、ついつい本気になってしまっているんじゃないかと思わせたいのです。事実、そのようになる場合が多々あります」

− なるほど。多くのユーザーが「ガチっぽい」のを求めているのはそのとおりだと思います。

森林さん:「でも、それは虚構の世界であるという大前提が覆るわけではありません。コンドームを着けていてもコンドームを着けていないように見せたり、中出しをしていなくても中出しをしているように見せたり。かと思えば、本当に中出ししているのに、嘘っぽく見えてしまう場合もあるのです。なので、どれが虚構で、どれがリアルかは、見ている人が楽しみながら決めてくれればいいと思っています」

− ユーザーの受け取り方に任せる。これは作品作りで大事なことですよね。

森林さん:「実際の世界でも、女性のイクはそれが演技なのか本気なのかわかりません。AV女優さんのイクも同じです。その場で対面している男優からしても真偽はわかりません。真偽を追求することにはあまり意味がなく、自分がどう捉えるかが重要です。なるべく真実に見えるように僕たちはがんばりますので、そのように楽しんでもらえたら嬉しいです。また、AVにおける本番行為も同様です。実際に挿入しているにもかかわらず嘘っぽく見えてしまうこともあるし、挿入していないのにリアルに見えることもあります。それは男優のチンポコントロール力やカメラマンの腕だったり、監督の編集技術によるものです」

− 確かに、現実世界でもわからないですよね…。男性は射精というわかりやすい行為がありますが女性はそうではないですからね。

スマホでアクセスできる時代だからこそ、性教育をアップデートするべきだ

− そこでお聞きしたいのは、なぜ今性教育を「森林原人」がやるのでしょうか?

森林さん:「スマホが普及し、多くの情報に簡単にアクセスできるようになっている今だからこそ、正しい情報を出来る限りわかりやすく伝えていくことが重要だと思っているからですね。誰もが、いつでも、どこにいてもその情報にアクセスできるような状況を簡単に作れるからこそすべきだなと」

− 今は確かに、正しいのかそうではない情報なのかがなかなかわからない時代でもありますからね。

森林さん:「それをなぜAV男優である僕がやるのかというと、僕は性が人間の根源にあると考えているからです、それは男優をやっていく上で様々な経験をして得た確信です。性の喜びや楽しみも、そのリスクや難しさも、自分の体験に基づいて話していけるのは、実際に経験してきたからだと思っていますし、多くの方からもそう言っていただいています」

− 職業として選んだからこそですね。

森林さん:「ただし、僕の発信するものはあくまでも個人レベルの経験に過ぎません。なので、一般性や医学的正確性を補ってもらうために、産婦人科医の上村茂仁先生の力をお借りします。上村先生は、ご自身で産婦人科のクリニックを開業しながら、休診日には小学校から大学まで幅広い教育機関に出向き、性教育の授業を行っている方です。その数は年間120校にもなります。その情熱と行動力の全面的バックアップの元、今の時代に則し、必要な情報が揃っている性教育をしたいと思います」

子どもに性教育をするならば、まずは親自信は性を見つめ直すべき

− ここでお聞きしたいのですが、性教育をしていく者として、現在親である人は家庭内で子どもにどのように性教育をしたらいいと思いますか?

森林さん:「親が子供に伝えていくときに重要なのは、まずご自身が持つ性に対する偏見やマイナスイメージをゼロに戻してもらうことです。その上で、当たり前であることを当たり前に話して欲しいです。それは、ブーメランのように親自身にも返ってきます。自分たちの振る舞いや夫婦関係のあり方を子どもは1番身近なモデルケースとして見ていますので、男女の不平等さや性に対する後ろめたさが家庭にあると、それはどうしても子どもに伝わります

− なるほど。まず親からということですか。

森林さん:「そうですね。親が子どもに伝えていくには、その前に親自身が性と向き合わなければいきません。もしそれができたとしても、経済的な成果が生まれたり、目に見えて子どもの学力が上がったりするわけではありません。ですが、性は死ぬまでつきまといますから、早い段階で正しい性を知り、自分らしい性のあり方を見つけていく事は、必ずや豊かな人生につながります。不都合なことも多く出てくるでしょうが、面倒くさがらずに性と向き合ってほしいです」

− 性と向き合う。これは本当に大事だなと思います。

森林さん:「僕が男優を始めたのは、性に振り回されるかのごとくその世界にのめり込んだからです。一般的には道を踏み外したと思われますが、一般的ではない道だからこそ見えてきたものも多くあり、その幾つかは、人間の本質に迫るものだと思っています。性を通して人間の深淵を覗き見ることができたので、僕が見たものを様々な形で、より多くの人に伝えていきたいと思っています。年齢的にも、男優としての終わりが見えてきている今ですが、性にのめり込んでいるのは、男優を始めた20歳の頃と同じままです」

− 男優を始めた20歳の頃のままだからこそ、伝えられることがあるんですよね。本日はありがとうございました!

現在、森林原人さんは本当の性教育を教えるためのクラウドファンディングを実施中です!
ぜひ森林さんの考えに賛同している方は支援をおねがいします!
スマホ世代向け〈学校では教えてくれない〉本当の性教育〜誰も傷つかないための知識〜