中性的な身体を持つ、インターセックスとは?人気漫画家・新井祥氏に聞いてみた

男性でもない、女性でもない、中間的な性別を持つインターセックスと呼ばれる人たちのことをご存知でしょうか。

体は男性であるにも関わらず、心は女性であったり、その逆であったりする性同一性障害については年々認知が広まっていますが、中間の身体を持つインターセックスについては知らない方も多いことでしょう。

今回は、女性として育てられ、結婚もしていたものの、30歳から男性として生きているインターセックス人気漫画家新井祥先生インターセックスとは何なのか、そしてインターセックスで困ったことや良かったことをお聞きしました。

男性でも女性でもない身体?インターセックスって医学的にどういう状態なの?

まずは、新井祥先生簡単なプロフィールを紹介します。

新井祥(あらいしょう)。1971年4月17日生まれ。
自身のことをインターセックスと知らず、30歳まで女性として人生を送る。女性として生きていた頃に結婚もしており、元夫は俳優のIKKAN。
30歳の時にインターセックスと診断され、現在は男性として人生を送っているが、戸籍は女性のままである。
現在は人気漫画家・専門学校の講師・オフィス★怪人社社長。
代表作として、インターセックスとして生きる自身の日常を取り上げた、『性別が、ない!』が知られている。

新井祥オフィシャルブログ→「クィアな日常
Twitter→@ShoArai

自身もインターセックスであるという新井祥先生。
そもそもインターセックスとは医学的にどういった状態なのでしょうか。まずは、インターセックスについて簡単に説明していただきました。

「インターセックスとは、染色体、生殖腺などが先天的に非定型的な状態の人を表す言葉です。

パッと見わかるタイプの人(性器が男児とも女児とも判別しにくい状態で生まれてくるなど)もいれば、染色体や内蔵の検査を受けないとわかりにくいタイプの人もいるので、男女どちらの性別に登録されているのかは様々。
生まれた時に医師も気づかず、どちらかの性別に分類され、インターセックスだと気がつかないまま人生を送る人も多くいます。」

ーなるほど。染色体や生殖腺などの関係で、単純に身体を「男性」や「女性」に区別することができない状態なのですね。
そういった場合、心はどういった状態になるのでしょうか。

心の性別は身体の作りとは別なので、インターセックスでも“心は完全に女”“完全に男”という人が多く、中性的だからと言って心の性別も中間だとは決めつけられません。

“半陰陽(はんせいよう)”“両性具有”という単語は一昔前まで使われていましたが、さまざまなタイプに分かれるので一言で括れなかったり、当事者がその言葉を差別的と感じて嫌がったりすることもあり、現代では全体を総合して“性分化疾患”という言葉が使われるようになってきました。」

一言に“インターセックス”と言っても、その状態はさまざまであり、気づいていない人も多いと言う新井祥先生。
また、身体的に中間的な状態でも、心の性別はどちらかに分かれている場合が多いのだと言います。

なぜ30歳から性別を変えて生きることにしたの?性別を変えることで、考え方も変わる?

人によってさまざまな状態であるインターセックスの方々。新井祥先生自身は30歳でインターセックスと診断され、それまで女性として生きていたものの、それを機に男性として生きていくことを決意します。

何がきっかけでインターセックスということに気がつき、男性として生きていくことにしたのでしょうか。また、女性として生きる時と男性として生きる時で、考え方や性格の変化はあるのでしょうか。

「30歳くらいから身体が男性化してきて、男性ホルモンの数値が男性並みに変わっていきました。
実は10代の頃も一時的になっていた状態なんですが、20代になっておさまっていたので“大人になったら女っぽくなるだろう”と思っていたら…という感じです。

体毛や性器の感じなども変わり、女性として暮らすのはきついと感じるようになりました。」

ー先天的にインターセックスという状態でも、時期によってホルモンバランスが変わり、女性寄りの身体になったり男性寄りの身体になったりするということですか?

「そうですね。当時の僕はまだ自分がインターセックスだと知らなかったので、自分の身体が男性化していく原因を突き止めるべく、内科・精神科・婦人科・内分泌科…さまざまな種類の病院を渡り歩きました。

その結果、インターセックスと診断され、性ホルモンを体内であまり生成できないことが分かったんです。医師には、今後の人生をおばさんとして過ごす為には女性ホルモンの投与が必要だと言われました。」

ー当時は女性としてご結婚されていたと伺っていますが、そこで女性ホルモンの投与は選択されなかったのでしょうか?

「自分は自分の心のあるままに、身体の向かうままに“おじさん”として中年以降を過ごしていくことを決意しました。

当時のパートナーは“男同士になってしまう”ことを嫌がり反対しましたが、彼は結婚生活とは別に沢山の彼女を作るタイプの人だったので“別に別れても問題なさそうだな”と思いまして(笑) 。」

ーそうだったんですね。自分の体の向かうままに生きていこうと決意されたのは素敵ですね!
年齢や時期によってホルモンバランスが変わり、身体や雰囲気が「女性寄り」になったり「男性寄り」になったりするとのことですが、ホルモンバランスが変わった時は心も「女性寄りの考え方」や「男性寄りの考え方」に変わるのでしょうか?

性欲に関しては変化を感じますね。
女性ホルモンの多い時期は受動的な性欲のありかたになったり、そもそも性欲自体が薄くなったりします。男性ホルモンが多くなると、その逆(笑)。

他の性分化疾患(インターセックス)の知り合いたちに聞いても、ホルモン治療の具合で性欲のありかたは揺れるケースがあるようなので、人はある程度ホルモンに左右される生き物なんじゃないかなぁと思います。」

ー日常的な物事の考え方はどうですか?

「日常的な考え方に関しては、ホルモンの量というより“どちらの性別として暮らしているか”の方が関係している気がします。世間からの扱われ方や、男性・女性、どちらのコミュニティに属して社会生活を送っているかがポイントになるかと。

例えば、生まれつき男性でも女性のコミュニティに属して職場や街の中でも女性として扱われるようになったら、“女性としての考え方(価値観)”を持つのではないかということです。見える世界が変わる、という訳ですね。」

ーなるほど。確かに、人格や価値観はその人の育った環境で形成されていきますもんね。

「そうなんです。

実際に、男性から女性になった友人が過去を隠して女性社員として会社勤めをしたんですが、“女装してるうちは女性に「可愛い~」とか言われたけど、本物の女として女社会に混じったら「クールで男っぽい所ある変なお姉さんキャラ」だと思われる事が判明した。そのキャラに合わせて振る舞ってるうちに、だんだん自分でもそう思えてきた”と言ってました(笑)

人の性格は、ホルモンではなく環境が形成していくような気がします。」

新井祥先生の場合、目に見えて体が男性化していったため、インターセックスであることに気がついたとのことですが、そのまま気がつかずに一生を終えてしまう方も少なくないでしょう。

また、ホルモンのバランス性欲や外見、雰囲気などには影響を及ぼすようですが、性格や考え方などは生まれ育った環境に影響される傾向にあるようです。

性別を変えて生きる上で、困ったことは?良かったことは?

「身体のあるままに生きる」という決意をした新井祥先生ですが、実際にインターセックスとして生きる上で、困ったことはないのでしょうか。
また、逆に良かったことはあるのでしょうか。

「一番難儀なのはトイレですね。立ちションするかどうかの問題ではなく、衛生観念的な面で。

男性の皆さんは知らないと思うんですが、女性用のトイレや更衣室って本当に驚くほど綺麗で臭いが少ないんですよ…!
30歳までその環境で生きてきたので、男性の衛生観念には正直言ってなかなか馴染めません。」

ー人生の中で女性用トイレと男性用トイレ両方を使ったことがある方は少ないかもしれませんが、実際に両方使ってみると、そんなに違うんですね。
男性の方は女性の家でトイレを借りる時、すごく綺麗に使うことを心がけた方が良さそうですね(笑)。

「良かった面は、逆にその“女性として暮らした記憶”ですね。

女性の部下に対して気持ちを読んであげやすい。実は僕は女子校出身なんですが、“女子校で少女たちとキラキラした青春を送れたおじさん”ってのもなかなかいないじゃないですか。貴重な体験ができたと思います。

今となっては大金を積んでお願いしてもできないことだから…(笑)まさに思い出は宝、ですね。」

“女性として生きてきた30年間”を武器に、“女心の分かるおじさん”として生きる新井祥先生。インターセックスとして生きる上で大変なこともありますが、他の人では得ることができない思い出もあるようです。

大切なのは“あるがままに生きること”。男女両方の思い出ができるという、大きなメリットもある!

人によってケースがさまざまで、一言には括ることが難しいインターセックス。しかし、身体がどんな状態であれど、自分らしく生きることを続ける新井祥先生には、学ぶことがたくさんあります。

また、先生の話では人の価値観はホルモンではなく環境に左右されるとのことなので、女心が理解できずに困っている方は、女性との触れ合いを大切にするのが良いでしょう。思い切って女子会などにも頻繁に参加させてもらえば“女心の分かる人”として女性から人気が出るかもしれません。